文具メーカーで事務をしていた朝希は、職場での行き違いをきっかけに退職し、しばらくは人と距離を置いた生活を送る。やがて兄の営む家具屋で店番を手伝うようになり、家具に宿る思いや来店客の事情に触れながら、日々の感覚を取り戻していく。物語の舞台は、住宅街の家具屋と裏路地にある喫茶店「黒手毬珈琲館」。店に置かれたスツールを手がかりに場がつながり、昼の客と夜の店員が重なる仕掛けもある。アレンジ珈琲を軸にしたやりとりを交えつつ、仕事の空白を抱えた朝希が生活の輪郭を組み直していく単巻作品。

構造レビュー

編集部判定 良作

ストーリーの良さ A (3) レビュー

理由・補足

編集部

タイトルからの想像で、珈琲店や喫茶店の話が来るかと感じられたが、最初は主人公の会社での出来事が中心となって、しっかりと描かれていた。会社でどのように働き、どのような人間関係があって、退職に至ったのかなどがよくわかる。ややタイトルに押された雰囲気を感じてしまった。

キャラクター A (3) レビュー

理由・補足

編集部

穏やかな主人公、それを支えてくれる兄という、大人の兄妹愛を感じつつ、家具を通して新たな出会いができる。家具を思う兄のまっすぐさが、主人公である妹にも伝わっているところは深く人間味を感じられた。会社のシーンでの登場人物は、どの会社でもあるあると感じられ、むしろ共感が持てるキャラクターが多い。

設定・世界観 S (4) レビュー

理由・補足

編集部

最初は家具店が中心なのか、珈琲店が中心なのか、やや迷う部分があるが、最終的にどちらもよい具合でまとめられており、主人公の居場所が少しずつ増えていく様子を感じさせられた。どちらも落ち着いた雰囲気なので、読み手も気持ちが穏やかになれる世界観。

話題性 A (3) レビュー

理由・補足

編集部

第1回マイナビeBooks大賞大賞受賞。 お仕事小説コン特別賞受賞。

初心者向け A (3) レビュー

理由・補足

編集部

世界観が落ち着いているので、ゆっくり読書をしたい人や、社会人経験があって主人公に共感が持てる人は読みやすいと感じられる。あまりガツガツした勢いはないので、初心者が楽しんで読めるかどうかは、その人の受け入れ方が多いのではないか、と感じた。

読後感の良さ S (4) レビュー

理由・補足

編集部

最後までコーヒーの香りに包まれて終わっていく、穏やかさを感じることができた。穏やかさを感じながらの終わり方に、心落ち着くところを強く感じる読後感。

テンポの良さ A (3) レビュー

理由・補足

編集部

全体の構成的に、テンポがいいという感じではなく、丁寧に話が進んでいく、という印象。落ち着いた家具店と珈琲店の良さを、最大限に引き出しているような、雰囲気の良さである。そのため、やや遅く感じる場面もあった。

読みやすさ S (4) レビュー

理由・補足

編集部

丁寧に描かれていること、コーヒーの細かな知識や情報が散りばめてあり、面白さがある。コーヒーが好きな人にとっては、分かりやすく、興味を引くのでさらに読んでいきたいと感じられるのではないだろうか。

短評・キャッチコピー

この項目をレビュー

編集部

家具、カフェ、落ち着いた雰囲気。カフェ好きな人にはたまらない雰囲気の中で、心が癒されるひと時を感じられる作品。

編集部

会社でのトラブルが原因で退職した主人公が、兄の家具屋で少しずつ回復していく。その中で、出会った客が店員をしている喫茶店を見つけ、兄のスツールがあることに気づいた主人公は、その喫茶店へ通うことになる。アレンジ珈琲が数々登場し、喫茶店としての温かさを感じられる作品。

こんな人におすすめ

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編集部

・家具店や家具が好きな人 ・コーヒーや喫茶店が好きな人 ・穏やかな話を読みたい人 ・会社でトラブルがあり、それから回復していくストーリーが読みたい人

編集部

澤ノ倉クナリ(さわのくら・くなり) 千葉県育ち、長野県在住。 2015年小説投稿サイト「小説家になろう」で開催された「お仕事小説コン」にて本作が特別賞を、その後ノミネートされた「第1回マイナビeBooks大賞」では大賞を受賞した。 本作で書籍化デビュー。

イラストレーター情報

この項目をレビュー

編集部

六七質

編集部

第1回マイナビeBooks大賞大賞受賞。 お仕事小説コン特別賞受賞。

編集部

最初は人間関係のトラブルが細かく描かれているので、若干ストレスを感じる部分を目の当たりにすることもあるが、最後まで穏やかな雰囲気で進んでいく作品。主人公が兄の家具店と黒手毬珈琲館のどちらもに、居場所を見つけていく姿は、人生に何があってもいいことがある、前向きに生きていくことでいいことがある、というのを感じさせられた。また主人公を優しく支えてくれる兄の存在は、兄妹愛を強く感じさせ、家族の大切さを実感できる。

作品Q&A

文体はどんな感じ? ストーリー
ベストアンサー
とても丁寧に描かれており、コーヒーの知識など細かい部分も分かりやすく説明されている。

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世界観の作り込みは? 世界観
ベストアンサー
家具の良さ、コーヒーの良さ、その中に人と人の優しいやりとりや、時間が流れていく世界観。丁寧に作られた世界観は、穏やかさを感じさせることばかりだった。

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評価されるポイントは? ストーリー
ベストアンサー
家具についてもそれなりに細かく描かれているが、コーヒーに関する知識については面白味を感じさせられるほどに、細かく描かれていた。こんなコーヒーを飲んでみたい、アレンジされたものの面白さなどを感じ、主人公が興味を惹かれていく気持ちに共感できる。 【おすすめキャラクター】 朝希 主人公。会社でいじめを受け、退職する。兄とは仲が良く、兄の経営する家具店の店番をすることに。家具に関することなど、細々した知識を持っていながら、なかなか人に伝えられない一面もある。

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この作品の特徴は? ストーリー
ベストアンサー
会社の上司からいじめを受けて退職した主人公は、兄の経営する家具店を手伝うことに。慣れない接客をしながら、黒づくめの格好をした青年と出会う。その人は黒手毬珈琲館という場所で働いており、そこには兄のスツールがあった。些細なことで主人公は人間関係を広げ、またさまざまな美味しいコーヒーと出会っていく。

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どんなテーマ・ジャンル? ストーリー
ベストアンサー
会社でのトラブルがあり、退職までしてしまった主人公が、少しずつ回復していく姿をゆっくり見ることができる。慣れない接客業であっても、兄のために頑張る姿が心温まる。また、家具のことをまったく分かっていないわけでもなく、それなりに知識のある様子もうかがえて、主人公が本来はしっかりしている一面も持ち合わせていること、会社でのことは本当に人間関係のトラブルであり、主人公の悪い部分ではないことを感じさせられた。

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読者の声

読者レビューをもとに AI が要約した内容です。

作品の魅力

  • 職場のいじめや人間関係のしんどさがリアルで、社会人経験の浅い読者ほど共感しやすい。
  • 暗い日常と対照的に、珈琲館でのやりとりやアレンジコーヒーの描写が温かく、読後に「珈琲が飲みたい」と感じる。
  • 傷ついた心が少しずつ回復していく、優しい再生譚として読める。
  • 兄やバリスタ、恩師など、主人公を支える人物が好印象で、ほっとできる場面がある。
  • 豆知識より、接客や生き方、人との距離感といった社会人としての考え方に触れられる点を評価する声もある。

こんな人におすすめ

  • 職場の理不尽さや人間関係の疲れに共感したい読者。
  • 喫茶店・珈琲・ゆったりした空間が好きな読者。
  • 底抜けに明るい話より、辛さのあとに温かさを感じたい読者。
  • 若手社会人の悩みや自信のなさに触れたい読者。
  • 疲れたときや嫌なことがあったあとに、ほんわかと読みたい読者。

人を選ぶポイント

  • 主人公のネガティブさや幼さ、恋愛面の言動にイライラし、共感しづらい・魅力を感じにくい。
  • 表紙やタイトルから穏やかな珈琲ものと期待した読者のなかには、冒頭の重さや暗い空気にギャップを感じる声がある。
  • 大きな展開が少なく淡々と進むため、途中で物足りなく感じて読むのをやめた。
  • 珈琲館設定が物語に必須ではない、流行に乗った印象。
  • バリスタの年齢設定と大人びた描写の間に違和感を覚えた。

テンポ・読後感

最初は会社での場面が重く、読みながら胸が苦しくなるという声が多い一方、珈琲館に通うようになってから空気が和らぎ、全体として「優しい」「心が暖かくなる」読後感を残す作品だという声がある。底抜けに明るい話ではなく、現実味のあるしんどさと癒しが同居する、ゆったりしたテンポの回復譚として受け止められる傾向がある。

キャラクターへの評価

  • 朝希:パワハラ退職後の弱さや人間関係への怯えに共感する声がある一方、極端で視野が狭く、男性への好意の持ち方や言動に苛立たしさを覚えるという批判も多い。
  • 黒塚:珈琲館での存在が癒しになり、落ち着いた大人びた印象で好意的な声が多いが、年齢設定とのズレを気にする読者もいる。
  • 兄・恩師・マスターなど周囲の男性陣:良い人ばかりで安心感があり、主人公を支える存在として評価される声が多い。
  • 登場人物同士のその後や、珈琲館での関係の続きを読みたい。

巻一覧

黒手毬珈琲館に灯はともる 〜優しい雨と、オレンジ・カプチーノ〜
2016年5月 ISBN 9784839958213
この巻のあらすじ

『第1回マイナビeBooks大賞』大賞&『お仕事小説コン』特別賞W受賞!

文具メーカーで事務をしている朝希は真面目に日々働いていたが、新しい課長に目の敵にされてしまう。見兼ねた先輩社員に助けられるも退職を余儀なくされた。 以来、半ば引きこもりのような生活を送るが、これではマズイと兄の営む家具屋で店番を始める。接客は辛いが兄の想いの詰まった家具に囲まれる穏やかな日々が過ぎていく。 ある仕事帰りの夕方、裏路地の『黒手毬珈琲館』を通りかかったとき、中に家具屋のスツールがあるのを見つける。と、ドアが開き、全身黒ずくめの店員が出てくるが、それは昼間来た客で……。

多彩なアレンジ珈琲の裏には誰かの温かな想いがあるーー。 心が疲れたときに効く、優しい一杯をあなたへ。

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