硝子の棺に横たわる少女エリスを軸に、人物ごとの事情が少しずつ露わになる連作形式の物語。舞台は墓地、仕立屋、伯爵邸、廃墟、川辺の屋敷など、閉じた空気を持つ西洋風の場所が中心で、黒装束の男が棺を運ぶたびに、別の土地で別の誰かがエリスと向き合う。墓守の青年、夫を失った仕立屋、成金貴族の息子、伯爵に雇われた男など、接点を持った者たちの内側には、それぞれ隠し事や偏った思いがある。言葉を持たないエリスは説明の中心というより、周囲の欲望や喪失を浮かび上がらせる存在として置かれ、各話が緩やかにつながっていく。全2巻。
構造レビュー
作品Q&A
読者の声
読者レビューをもとに AI が要約した内容です。
作品の魅力
- 硝子の棺に納まった腐敗しない少女エリスを軸に、時代や国をまたいで人々の運命がずれていく構図が強い。
- 耽美、退廃、ゴシック、ダークメルヘンの空気が濃く、幻想小説としての没入感が高い。
- 美しい文章や言葉選び、心理描写の細かさを評価する声が目立つ。
- 連作短編として、各話ごとに異なる人物の執着や破滅が描かれるため、読み味に変化がある。
- 作品全体の雰囲気が強く、世界観そのものを楽しむタイプの読書体験になっている。
こんな人におすすめ
- 耽美系、ゴシックホラー、ダークファンタジーが好きな人。
- 人物の心理が崩れていく過程や、執着・妄執の描写を味わいたい人。
- 物語の謎や余韻を残す作風を好む人。
- 文章の美しさや世界観の完成度を重視する人。
- 童話的でありながら不穏な作品に惹かれる人。
人を選ぶポイント
- 明るさや救いを求めると重く感じやすい。
- すっきりした解決や説明を期待すると物足りなさが残りやすい。
- エリスやカロンの正体、仕組みの深掘りを求めると消化不良になりやすい。
- 破滅や悲劇の色合いが濃く、読後感はかなり苦い。
- シリーズ途中から読むと関係性や謎の積み上がりを掴みにくい。
テンポ・読後感
- 連作短編で、各話ごとに別の人物がエリスに触れて崩れていく流れ。
- 文章は滑らかで読みやすく、短時間でも進めやすい。
- 物語は静かに不穏さを積み上げ、じわじわ狂気へ寄せていく。
- 華やかな美しさと残酷さが同居し、読後に重い余韻が残る。
- 童話めいた外見に対して、中身はかなりダークで陰影が強い。
キャラクターへの評価
- エリスは無言で無垢に見える一方、周囲を破滅へ引き寄せる異質な存在として受け止められている。
- カロンは棺を運ぶ謎めいた人物として印象が強く、正体や役割への関心が集まっている。
- 各話の人物は孤独、劣等感、嫉妬、承認欲求、芸術欲などを抱え、そこにエリスが刺さっていく。
- 人物の狂い方が急ではなく、内面の揺れとして緻密に描かれている。
- 善悪で割り切れないまま、魅了される側の弱さと危うさが際立つ。
巻一覧
この巻のあらすじ
硝子の棺に納められた、美しい少女の遺体。 彼女ーーエリスは決して腐敗せず、いつの頃から存在するのかもわからない。
棺は、黒装束の男に運ばれ、エリスは時代も国も超えてその姿を見せる。 あるときは孤独な墓守の青年の前に。 またあるときは友人の美貌に複雑な思いを抱く少女の前に。 ある成金貴族の息子は、エリスのための“秘密の集い"にのめり込んでしまう。
彼らはなぜ、エリスに惹かれてしまうのか。 その先に、自身の破滅が待ち受けているとも知らずにーー。 「エリス、ほらご覧。また君のために人が死んだ」
2021年集英社ノベル大賞準大賞受賞作、文庫化!
この巻のあらすじ
早くに夫を亡くしたあとも、ひとり仕立屋を営むレーネ。 ある日、黒装束の男が現れ、「ドレスを一着頼みたい」という。 店に運ばれてきたのはなぜか腐敗しないという美しい少女の「遺体」だった。 初めは気味悪く思っていた彼女だが、採寸のために彼女に触れるうち、 次第に不思議な安心感が湧き上がってくる。 「こんな子が、私たちの娘だったら良かった」と思うと愛しさは増してゆき、 亡き夫との間に授かった子供であるかのように接するようになる。 いつも物憂げな表情をしていた彼女は、日増しに明るさを取り戻していく。 だが実は、亡き夫に対し、レーネは大きな秘密を抱えていたのだーー。
ある伯爵に拾われ、川のそばの土地管理人として雇われた「男」。 しかし、「男」は伯爵たちが廃墟の中でどんな“遊び”に興じているか知ってしまった。 その“遊び”の中心には硝子の棺があることもーー。 棺の中身が欲しくなった「男」は………。
決して腐敗しない、死せる美少女エリス。 彼女が何者で、いつからこの姿なのか、知る者は誰もいない。 目を開けることも、しゃべることもない彼女がもたらすのは、破滅か、祝福かーーー。 ダークメルヘンの世界へ、ようこそ。
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