物語は、大正の帝都で継母に閉じ込められていた与一郎が、狐面の男に連れ出される場面から動き出す。行き着く先は、盗人たちを束ねる屋敷だった。そこで与一郎は掏摸の腕を持つ藤吉と暮らし、助けられる側と迎える側の境界が少しずつ揺れていく。並行して、湯島の陰間茶屋で働くおりんと、そこへ通う吉田刑事の筋も描かれ、帝都の裏側にある家、店、通り、警察が互いに接続される。救出、転居、再会、すれ違いが積み重なり、同じ時代の中でも立場ごとに見える景色が変わる。
構造レビュー
作品Q&A
読者の声
読者レビューをもとに AI が要約した内容です。
作品の魅力
- 大正〜昭和初期の帝都を思わせる、薄暗さと温度が同居した空気感が強い。
- 着物の所作、街の描写、色や匂いまで立ち上がるような文章が印象に残る。
- 今市子の装画との相性がよく、表紙買い・ジャケ買いの満足度が高い。
- 与一郎と藤吉の、愛情と執着が絡み合う関係性が切実で引き込まれる。
- 余韻を残す締め方や、続きが気になる引きの強さが作品の魅力になっている。
こんな人におすすめ
- 大正浪漫や帝都ものの雰囲気をじっくり味わいたい人。
- すれ違い、執着、共依存ぎみの関係性に惹かれる人。
- 露骨すぎない色気や、情緒のあるBLを読みたい人。
- 文章の美しさや情景描写を重視する人。
- 1冊で完結感より、シリーズの余韻や続編への期待を楽しめる人。
人を選ぶポイント
- 恋愛は甘さより切なさや痛みが前に出る。
- すれ違いが長く、気持ちの持っていき場が苦しくなる展開がある。
- 関係の進み方はゆっくりで、すっきり解決する読後感ではない。
- 作品によっては前巻の続き感が強く、単体だと小さく感じることがある。
- 露骨な描写は強すぎないが、BLや性描写に慣れていないと少し驚く場面がある。
テンポ・読後感
- 全体はまったり、しっとり、けぶったような空気で進。
- 事件や感情の動きは静かだが、終盤で一気に空気が変わる。
- 読後は爽快感より、切なさと余韻が長く残る。
- 文体はやや硬めでも読みやすく、さらさら進。
- 乾いた感じと湿度の高い感情が同居している。
キャラクターへの評価
- 与一郎は不器用で頑固、遠慮深く、自分を責めがちな印象が強い。
- 藤吉は世話焼きで一途、与一郎だけを見ている存在として受け止められている。
- 二人は言葉足らずで、互いの望みをすれ違いのまま抱え込む関係に見られている。
- おりんや吉田は、印象が変わる脇役として強く記憶に残っている。
- 熊次は渋くて頼れる存在として、物語の転機を支える役回りに映っている。
巻一覧
この巻のあらすじ
継母に幽閉されて育った与一郎は、ある晩、狐の面をつけた男に救い出される。匿われた先は、大正の帝都で盗人たちを取り仕切る屋敷だった。弱りきった与一郎の面倒を甲斐甲斐しく見てくれる藤吉。彼もまた、神業と賞される掏摸の名手だ。ふたりは惹かれ合うが、そこには非情な運命が待ち受けていた――。匂い立つ大正浪漫の中で繰り広げられる、壮絶な愛憎劇。待望の新シリーズ、いよいよ開幕!
この巻のあらすじ
継母に幽閉されていた蔵から救い出された清水与一郎は、帝都の盗人を取り仕切る“水燕”の屋敷で育った。しかし紆余曲折ののちに、落ち延びるようにして屋敷を去ったのは、1年半前のこと。与一郎がある日、老婆を助けたのを機に、葬り去ったはずの人間関係がふたたび甦る。水燕のあらたな頭領となった藤吉との再会。ふたりの愛憎はどこへ向かうのか――。匂い立つ大正浪漫、大好評第二弾!
この巻のあらすじ
ときは大正。“おりん”こと花村林蔵は、湯島の陰間茶屋で下働きをしていた。いずれは、男娼としてひとり立ちしなければならない身だ。その茶屋をのぞきに最近よく来る男が、土砂降りの雨の日、ずぶ濡れで立ちつくしていた。おりんはいたたまれず、番傘を手に飛び出す。こうして、吉田刑事とおりんは出会う。ふたりは、やがて恋にも似た思いを抱くのだが……。知られざる、もうひとつの愛憎劇!
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