『夢の国から目覚めても』は、女の子を好きだと感じてきた語り手を通して、百合を「誰のためにあるのか」という問いから見つめ直す作品です。舞台や制度の細部を積み上げるより、願望と現実のあいだで揺れる感覚や、恋愛感情をどう言葉にするかに軸があります。百合という言葉に重なる期待、違和感、自己認識のずれを手がかりに、関係の形を整理していく構成です。物語の中心は、好きという感情そのものだけでなく、その感情をどう扱えばよいかという戸惑いです。大きな事件や冒険の連続ではなく、感情の名づけと関係の意味づけが前に出るため、概念としての百合を中心に据えた内容になっています。

構造レビュー

編集部判定 判定なし

ストーリーの良さ A (3) レビュー

理由・補足

編集部

主人公はどちらも成人済み、片や広告代理店勤務の社会人で片や大学院生。そのせいか全体のトーンが落ち着いており、二十代~三十代の働く女性に刺さる、なかなかシビアな内容に仕上がっています。 百合(女性同士の恋愛)をフィクションとして楽しむ功罪に切り込んだ、アグレッシブな視点も評価できます。

キャラクター A (3) レビュー

理由・補足

編集部

レズビアンの有希とヘテロセクシャルの由香、どちらも等身大の共感の持てる人物として描かれていました。フィクショナライズされた背景と生活感のバランスも良かったと思います。

設定・世界観 A (3) レビュー

理由・補足

編集部

百合をフィクションとして享受する描き手・読み手の傲慢さや鈍感さを浮き彫りにし、百合ラノベが持て囃される風潮に問題提起した着眼点が新しかったです。

話題性 C (1) レビュー

理由・補足

編集部

作者の宮田眞砂はpixiv主催の百合文芸コンテスト出身。商業的には無名の新人なので、殆ど話題になりませんでした。

初心者向け B (2) レビュー

理由・補足

編集部

題材的に人を選ぶのもさることながら、ラノベらしいキャッチャーさやカジュアルさは控えめなので、初心者向けとは言えません。

読後感の良さ C (1) レビュー

理由・補足

編集部

途中までは良かったのですが、最後の最後にあり得ないご都合主義が発動してしまいがっかりしました。リアル同人作家でイベント参加経験がある人ほど、取って付けたようなラストに突っ込みたくなると思います。

テンポの良さ B (2) レビュー

理由・補足

編集部

可もなく不可もなく。良くも悪くも二人の関係性の変化に終始し、大きな事件は起こりません。

読みやすさ B (2) レビュー

理由・補足

編集部

二十代女性の一人称語りで進行する為、感情移入が捗るのがメリットです。

短評・キャッチコピー

この項目をレビュー

編集部

百合同人描きのヘテロとレズビアンの恋の行方。

編集部

百合同人作家で同性愛者の有希はサークル「ゆゆゆり」の相方・由香に片想い中。だけど異性愛者の由香にこの気持ちは明かせない、明かしたら全てが終わる……。 日に日に大きく育っていく恋心を持て余す有希。あくまでフィクションとして百合を楽しむ由香。すれ違うふたりが行き着く果ては。

こんな人におすすめ

この項目をレビュー

編集部

現実的な百合ラノベが読みたい人 百合同人の描き手・読み手 仕事に悩んでいる人 同人イベントの空気感を味わいたい人

  • AI分析(あらすじ)

    百合という題材の意味づけや、恋愛感情の言語化を扱う作品に関心がある人。

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    レビューを読む

編集部

宮田眞砂は日本のラノベ作家。主に百合ミステリーを手掛けています。代表作は『セント・アグネスの純心 花姉妹の事件簿』『ビブリオフィリアの乙女たち』。

イラストレーター情報

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編集部

切符は日本のイラストレーター兼漫画家。百合作品を数多く手掛けています。代表作は『のうりん』シリーズ『ヴァンパイア・サマータイム』『スタイリッシュ武器屋』『わんでいりぴーと!』『名もなき竜に戦場を、穢れなき姫に楽園を』『聖女の力で婚約者を奪われたけど、やり直すからには好きにはさせない』他多数。

編集部

センシティブなテーマを扱った社会人百合としては読みごたえがありました。現実に同性愛者が存在しているにもかかわらず、百合をフィクションとして楽しむ人々の鈍感さに言及した点も攻めています。 ……が、最後で台無し。紆余曲折あって仕事を辞めた由香が同人作家として仕切り直すのはいいとして、僅か数か月で編集にスカウトされ商業デビュー。 これが数年後なら納得できなくもありませんが、当人の覚悟に反し殆ど苦労せずハッピーエンドになってしまったので、ご都合主義に興ざめしました。

作品Q&A

評価されるポイントは? ストーリー
ベストアンサー
【おすすめキャラクター】 由香 広告代理店勤務の百合同人作家。イベントで出会った有希とサークル「ゆゆゆり」を結成しました。女児アニメが大好きですが、本人の恋愛対象は男性です。百合はフィクションと割り切って楽しむスタンス。

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読者の声

読者レビューをもとに AI が要約した内容です。

作品の魅力

  • 創作としての「百合」と現実の恋愛・生きづらさの対比が、切実さと温かさを伴って描かれている。
  • 「百合は誰のものか」という問いを、さまざまな立場から掘り下げ、ジャンルそのものを見直すきっかけになる。
  • 前半の瑞々しい日常描写と、後半の重さが重なり、タイトルの意味も読後に深まる構成が好評。
  • 煌びやかで心地よい文体、鋭い言葉選びへの惚れ込みが多く挙がっている。

こんな人におすすめ

  • 現実味のある百合小説や、恋愛だけでなく女性としての生きづらさまで描かれた作品を求める人。
  • 百合同人の描き手・読み手、同人イベントの空気感に親しみがある人。
  • 百合をフィクションとして楽しむ立場と、現実の同性愛やセクシュアリティの話を交えて考えたい人。
  • 創作活動や恋愛、仕事の悩みに共感しながら、自分と百合の関係を見つめ直したい人。

人を選ぶポイント

  • 後半は社会のしがらみや不安、鬱屈が色濃くなり、尊いだけの百合では済まない重さがある。
  • 百合同人・pixiv発の文脈やオタク百合文化への理解が浅いと、内輪ノリやメタ議論の入り込み方に距離を感じる可能性がある。
  • 百合の定義や消費の仕方について講釈めいた場面があり、好みが分かれる。

テンポ・読後感

  • 前半は有希中心の一人称で、サークル仲間との日常や心理描写が丁寧に進む、じっくりした読み味。
  • 後半は語り手が由香へ移り、現実側の葛藤や社会性が前面に出て、一気にシリアスで苦い空気になる。
  • 全体としては温かさと強さが共存し、無条件の肯定でも否定でもないバランス感が評価されている。

キャラクターへの評価

  • 有希はレズビアンとして現実を生き、由香への想いや関係変化への不安が切実に伝わる。
  • 由香は一見メルヘンに見えても、秘めた等身大の葛藤があり、後半でその重さが際立つ。
  • 百合ファンタジーに夢見がちなヒロへの共感や、創作仲間・ファンの輪がふたりを包み込む描写への好感も見られる。

巻一覧

夢の国から目覚めても
2021年3月 ISBN 9784065228081
この巻のあらすじ

私はずっと、女の子だけが好きだった――願望と現実の間で紡がれる世界・百合は誰のためにあるのかを問う、百合小説の新たな金字塔。

星評価・感想

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