本作は、泉サリのデビュー作として1冊に収められた作品で、現代の高校を舞台にしたガールズバンドの物語「みるならなるみ」と、新興宗教の共同生活の中で暮らす女子中学生を描く「シラナイカナコ」を収録する。前者では、男子部員に入れないと言われたことをきっかけに鳴海が女子だけのバンドを組み、ロックフェス出場を目指して練習を重ねる。欠員募集に応募してくるのは、笑顔と口調が胡散臭く、キーボードがうまい青年である。後者では、「幸福の子」として扱われる四葉が、学校にも居場所のない友人加子との関係の中で、ある小さな罪へ踏み込む。共同生活では他人を『お母さん』、家族を『四葉様』と呼ぶ関係が置かれ、部活の場と信者共同体という異なる環境から、十代の関係と居場所のずれを並べて見せる。
構造レビュー
こんな人におすすめ
-
AI分析(あらすじ)
高校の部活ものと、新興宗教の共同生活を扱う現代小説を読みたい人。十代の関係や居場所の揺れを扱う作品に関心がある人。
読者の声
読者レビューをもとに AI が要約した内容です。
作品の魅力
- 高校生ガールズバンドの熱量と、新興宗教を軸にした不穏さが対照的で、2編の落差が強い印象を残す。
- 青春のきらめきだけでなく、嫉妬・劣等感・虚勢・孤独などの生々しい感情が前面に出ている。
- 17歳で書かれたとは思えない観察眼や言葉の切り取り方に驚く声が目立つ。
- 2つの物語がゆるくつながる構成が面白く、同じ世界線を感じさせる仕掛けが効いている。
- 先の読めない展開と、読後にざらつきや余韻を残す空気感が印象的。
こんな人におすすめ
- 青春小説の勢いと、少し苦い感情の揺れを一緒に味わいたい人。
- ガールズバンドものと、宗教や閉塞感のある物語の両方に興味がある人。
- 若い作家の荒削りさよりも、勢いと感性の鋭さを楽しめる人。
- 人間関係の綻びや、言葉にしきれない感情の描写を読みたい人。
- 短編2本で温度差のある読書体験を求める人。
人を選ぶポイント
- 前半の青春パートは勢い重視で、展開の速さや粗さを感じる人がいる。
- 後半の宗教パートは不穏さや閉塞感が強く、重めの読後感になりやすい。
- 宗教設定の作り込みについては物足りなさを指摘する声がある。
- 主人公の振る舞いに共感しにくい、好きになれないと感じる読者もいる。
- 2編のテイスト差が大きく、前半の軽さを期待すると後半で印象が変わる。
テンポ・読後感
- 前半は疾走感があり、青臭さときらめきが同居する軽快なテンポ。
- 後半は空気が一変し、じわじわ圧をかけるような不穏さと閉塞感が強い。
- 全体としては短編らしく読み進めやすいが、感情の振れ幅は大きい。
- 文章は勢いがあり、若さゆえの荒さと鋭さが同時に立っている。
- 読後は爽快さよりも、ざらつきや薄い恐怖、余韻が残る。
キャラクターへの評価
- 鳴海は弱さを隠して強く見せるタイプで、虚勢込みのかっこよさが支持されている。
- バンド側の少女たちは必死さや不器用さが魅力として受け止められている。
- 後半の主人公は孤独や劣等感、攻撃性が混じる複雑さが強く印象に残る。
- どの人物も内面が表に見えにくく、言葉にしないと伝わらないもどかしさがある。
- 自分勝手さや危うさも含めて、人間らしさが濃く出ている。
巻一覧
この巻のあらすじ
2021年度集英社ノベル大賞〈大賞〉受賞! 17歳の才能が抉り出す新世代小説。この青春は、あなたをブン殴る。
「先生。今、テレビに出てる人たちは本物ですか?」 男子部員はあたしたちを入れるのを嫌がったーーだからあたしはバンドを組んだ、はずだった。高校入学を機にガールズバンドを結成した鳴海は、ロックフェスへの出場を目指して練習に没頭していた。だが高2の夏休み明け、メンバーのひとりが進路を理由に脱退してしまう。「女子限定」が条件の欠員募集に応募してきたのは、笑顔と口調がとんでもなく胡散臭く、そしてとんでもなくキーボードがうまい青年で……。(みるならなるみ)
「私は、彼らをこんな場所に貶めた世界を知りたかった」 ごく普通の女子中学生・四葉は「幸福の子」。新興宗教・運命共有教の救いの象徴として崇められ、信者同士で共同生活を行う家では他人を「お母さん」と呼び、家族には「四葉様」と呼ばれている。学校にも居場所がない四葉は、たった一人の友達である加子といつも一緒にいた。いじめられっ子である彼女に対し、四葉は友達だけど許せない、友達だからこそ許せない、ある「小さな」罪を犯してしまう。(シラナイカナコ)
ガールズバンドと新興宗教、全く異なる世界に属する少女たちの鮮烈で泥濘んだ感情を、 生々しく繊細な筆致で描くデビュー作。
星評価・感想
構造レビューと同じ星評価・感想欄に保存されます。平均・中央値は上の「構造レビュー」欄に表示されます。
感想を投稿するにはログインしてください。
まだ感想はありません。
